ENCOUNTER with MATHEMATICS ----- 数学との遭遇


第25回 Weil 予想





2002年12月13日(金)(14:40〜18:00) 〜 12月14日(土) (10:30〜16:50)

於 : 中央大学 理工学部 : 東京都 文京区 春日1--13--27




12月13日(金)
14:40〜16:00 Weil 予想,その由来と例 : 堀田 良之 (岡山理大・理)


16:40〜18:00 Grothendieck と Weil 予想 : 藤原 一宏 (名大・多元数理)


12月14日(土)
10:30〜11:50 Deligne とWeil 予想 : 斎藤 毅 (東大・数理)


13:40〜15:00 Weil予想と表現論 : 宇澤 達 (名大・多元数理)


15:30〜16:50 Weil 予想と数論-応用と今後 : 藤原 一宏 (名大・多元数理)


17:00〜 懇親会(ワイン・パーティー)





別紙の趣旨に沿った集会の第25回を以上のような予定で開催いたします。 非専門家向けに入門的な講演をお願い致しました。 多く方々の御参加をお待ちしております。 講演者による講演内容へのご案内を添付いたしますので御覧下さい。

連絡先 : 112-8551 東京都文京区春日 1-13-27 中央大学 理工学部 数学教室 tel : 03-3817-1745
ENCOUNTER with MATHEMATICS : e-mail : encmath@math.chuo-u.ac.jp
homepage : http://www.math.chuo-u.ac.jp/ENCwMATH
三松 佳彦 : yoshi@math.chuo-u.ac.jp / 高倉 樹 : takakura@math.chuo-u.ac.jp




Weil 予想



概要



Weil 予想,その由来と例 : 堀田 良之 (岡山理大・理)

A. Weilは,1940年および1941年の論文で有限体上の曲線の関数体に対する リーマン仮説の成立を予告したが,その"証明"には戦時中から戦後に掛けて の数年を要した.近代抽象代数幾何学の発生とも見なされるいわゆる3部作 である.

Severiらによる古典イタリア学派の対応の幾何学からアイデアを得た,対応 の跡の正値性(後にCastelnuovoの補題と呼ばれた)の証明である.(これは, Jacobi多様体では,Rosati元のあるある正値性にも対応する.)A. Weilはこ のように少なくとも2つの幾何学的証明(彼自身の言葉による)を曲線の場合 に与えた.

1949年に一般次元の多様体の合同ゼータ関数に対するリーマン仮説を予想し, これが最終的に1973年の夏 Deligneによって証明されたことは良く知られて いる.Weilのとった幾何学的道筋(正値性)によるものではなく,"数論的" ヨガ(いわゆるWeil層の諸操作)によるものである. 本講演では,このDeligne前夜までの歴史を曲線を込めたいくつかの例等を 引きながらお話ししたい.

参考文献
[1] Weil全集,第1巻([1940b],[1941];[1946a],[1948a],[1948b];[1949b], [1954h]).
現代の学生には,Mumford の3部作が代用となるか?



Grothendieck と Weil 予想 : 藤原 一宏 (名大・多元数理)

A. Grothendieck は Weil 予想の解決を目指し, 新しい代数幾何学の建設を目指した. その成果は彼と協力者による膨大な(にわかには近づきがたいといわれる) 著作 EGA, SGA としてまとめ上げられている. この講演では特に SGA 4, 5 を中心とした
・エタールコホモロジーの発生
・Lefschetz 跡公式, L-関数のコホモロジー解釈
・Poincare 双対性と関数等式
・関数と層の辞書
について解説する予定である.

参考文献
[SGA4] Artin, M., Grothendieck, A., Verdier, J. L., Theorie des Topos et Cohomology Etale des Schemas (SGA4), Lecture Notes in Math. 269, 270, 305 Springer Verlag
[SGA5] Illusie, L. (ed), Cohomologie l-adique et fonctions L (SGA5), Lecture Notes in Math. 589 Springer Verlag 1977



Deligne とWeil予想 : 斎藤 毅 (東大・数理)

Weil予想は、はじめは有限体上の代数多様体の合同ゼータ関数に関する予想として 登場したが、``Weil II''では、より広く、コホモロジーの重さの理論として 捉えられた。このようにして、Hodge構造との類似が明らかになり、 モチーフの世界へのとびらも開かれた。Deligneによるこの新しい展開を 解説するとともに、数論幾何への様々な応用についても述べる。

参考文献
[Weil1] Deligne, P., La conjecture de Weil I, Publ. Math. IHES 43 1974 273-308
[Weil2] La conjecture de Weil II, Publ. Math. IHES 52 1981 137-251



Weil予想と表現論 : 宇澤 達 (名大・多元数理)

有限群の表現では、既約表現の数と共役類の数が一致する。対称群の場合には、ヤング図 形の理論を経由して、共役類に対応する表現が構成される。対称群 を、一元体の上の一般線形群であると見る立場にたてば、有限体上の一般線形群、p-進体 上の一般線形群でも似たようなことができないか、という自然な疑 問がでてくる。

有限体上のシュバレー群にたいしてこの疑問にたいしては、DeligneとLusztigが解答 をあたえたが、その解決にはWeil 予想の解決にまつわるさまざまな手法が本質的な役割を果たした。Deligne-Lusztig理論 、Lusztigの指標層について考え方を概観して から、p-進群の表現について垣間みることにする。

また、Weil予想は有限体上の代数多様体の有理点の個数が位相的な性質から決定され る、という驚くべきものであるが、そのような見方 の、Height Zeta関数、 跡公式の軌道積分への応用についても述べたい。

参考文献
Deligne, P. and Lusztig, G., Representations of reductive groups over finite fields, Ann. of Math. vol 103, (1976)
Lusztig, G., Introduction to character sheaves, Proc. Sympos. Pure Math., 47 Part 1 (1987)
Kazhdan, D. and Lusztig, G., Fixed point varieties on affine flag manifolds. israel J. Math. vol 62 (1988)
Hales, T. C., Hyperelliptic curves and harmonic analysis, Contemp. Math., 177 (1994)
Franke, J., Manin, Y. I. and Tschinkel, Y., Rational points of bounded height on Fano varieties. Invent. Math. 95 (1989),



Weil 予想と数論-応用と今後 : 藤原 一宏 (名大・多元数理)

Weil 予想は有限体上の幾何学だけでなく, 保型形式とガロア表現との予期せぬ関連 (非可換類体論) を通し, 様々な数論の問題と関係する. 特に
・Hasse-Weil 型のゼータ関数
・保型形式のフーリエ係数に関する Ramanujan 予想
などを分析する手段を与えている.

しかしながら, Deligne による Weil 予想の証明方針は Grothendieck が望んだ形の もの....幾何学的な, 代数サイクルに対する正値性を使う大胆な仮説 (標準予想 )....とは異なる. 代数幾何学における究極の対称性(motivic ガロア群)を生み出す べきこの夢は果たして実現可能なのだろうか.

参考文献
「ガロア理論」数学のたのしみ 13, 日本評論社 1999 年
「非可換類体論が目指すもの」数学のたのしみ 17, 日本評論社 2000年




Last Modified : Nov 25, 2002 : 16:30