ENCOUNTER with MATHEMATICS ----- 数学との遭遇


第14回

Lie 群の離散部分群の剛性理論

Weil, Mostow, Margulis, そして・・・





2000年2月4日(金)(14:30〜17:50) 〜 2月5日(土)(10:30〜17:00)

於 : 東京都 文京区 春日1--13--27 中央大学 理工学部




2月4日(金)
14:30〜15:50 Mostow の剛性定理とその仲間達 I・・・剛性概観 : 金井 雅彦氏 (名古屋大学・多元数理)


16:30〜17:50 モストウ以前 - 揺籃期の剛性問題 : 納谷 信氏 (名古屋大学・多元数理)


2月5日(土)
10:30〜11:50 Mostow の剛性定理とその仲間達 II・・・調和写像と剛性 : 金井 雅彦氏 (名古屋大学・多元数理)


13:50〜15:20 Mostow剛性定理と最小エントロピー定理 :井関 裕靖氏 (東北大・理)


15:40〜17:00  Mostow の剛性定理とその仲間達 III・・・力学系・群作用の剛性 : 金井 雅彦氏 (名古屋大学・多元数理)




別紙の趣旨に沿った集会の第14回を以上のような予定で開催いたします。 非専門家向けに入門的な講演をお願い致しました。 多く方々の御参加をお待ちしております。 講演者による講演内容へのご案内を添付いたしますので御覧下さい。

連絡先 : 112-8551 東京都文京区春日 1-13-27 中央大学 理工学部 数学教室 tel : 03-3817-1745
ENCOUNTER with MATHEMATICS : e-mail : encmath@math.chuo-u.ac.jp
homepage : http://www.math.chuo-u.ac.jp/ENCwMATH
三松 佳彦 : yoshi@math.chuo-u.ac.jp / 高倉 樹 : takakura@math.chuo-u.ac.jp




超Lie 群の離散部分群の剛性理論

Weil, Mostow, Margulis, そして・・・

概要





Mostow の剛性定理とその仲間達 金井 : 雅彦氏 (名古屋大学・多元数理)

Lie 群の格子に関する剛性定理は種々の様相を有する. 数ある剛性定理の中でも多分最も著名であろう Mostow の剛性定理を例にとろう.それによれば, (1) 次元が 3 以上のコンパクト実双曲多様体は その基本群により位相・計量ともに完全に決定される. これが Mostow の剛性定理の幾何学的定式化である. また代数的な翻訳も瞬時にして可能である: (2) 適当な仮定を満たす非コンパクト型半単純 Lie 群は その格子により完全に決定される. いずれも,基本群ないし格子といった離散的対象により,一般には より自由度の高いはずの連続的な対象がコントロールされることを主張する. さて,証明に目を転じてみよう. Mostow 自身による証明(ちなみに現在では別証明が多数存在する) において本質的な役割を果たしたのは, (3) 擬等角写像の微分可能性 というある種解析的な事実であり,また (4) 無限遠境界への基本群の作用に関するエルゴード理論的考察 であった. ただし(4)に関しては,群作用により不変な共形構造の一意性が 議論の中核をなすがゆえに,より正しくいうならばエルゴード理論と 幾何学のハイブリッドと言うべきかもしれない(そう言えば, `Ergodic Geometry Seminar' というのがフランスにありましたが).

さらに post-Mostow と言うことになれば,Margulis の超剛性定理などが すぐに思い浮かぶ. 特にこれにより高階の半単純 Lie 群の格子の算術性が保証される. また Corlette, Gromov-Schoen, Jost-Yau, Mok-Siu-Yeung 等が 調和写像という大域変分法的な手法を用い Margulis の剛性定理の別証明を与えた のは比較的記憶に新しい. さらには群作用に対する剛性問題も忘れてはなるまい. Mostow や Margulis の剛性定理においては格子から 有限次元 Lie 群の中への準同型が取り扱われたのに対し, 群作用の剛性においては,群作用,すなわち微分同相群という 無限次元 Lie 群の中への準同型が対象となる. この無限次元性から生じる困難をいかに克服するかがその醍醐味である.

このように剛性問題は種々の数学の交錯する場である. この講演ではまず剛性問題を概観(第1話)した後に,調和写像による超剛性定理の 証明(第2話),群作用の剛性(第3話)についてお話しする予定である.

参考文献
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無題



モストウ以前 - 揺藍期の剛性問題 : 納谷 信 (名古屋大学・多元数理)

半単純リー群の格子の剛性の研究は、モストウの仕事によって 大域的な剛性定理に到達し、マルグリスの登場を待つこととなる。

この講演では、歴史を逆に遡り、「モストウ以前」を概観する。 とくに、ヴェイユの局所剛性定理に焦点を当て、この結果が ある種のコホモロジー群の消滅に翻訳されることをみる。 その証明には、問題が調和積分論を用いてあざやかに 解決されるさまを見ることができる。



無題



Mostow剛性定理と最小エントロピー定理 I, II : 井関 裕靖(東北大・理)

Mostow剛性定理の証明はいくつかありますが, 階数1の対称空間のココンパクト 格子に対する証明は, いずれも格子の同型から誘導される理想境界の間の同変な 同相写像に注目し, これが対称空間の間の同変な等長写像に拡張されることを示 す, という手順を踏んでいます. ここではG. Besson, G. CourtoisとS. Gallot の三人による重心写像を用いた証明のアイディアと概略を紹介します. これは非 常に簡明な証明で, 彼らの論文にもeasy enough to be taught eventually at the undergraduate level!と書かれています. (とはいう ものの, これを信じて4年生・大学院生向けの講義を始めた筆者は後悔し始めて います. もちろんこれはこの三人のせいでも証明のせいでもありません. )

この証明は最小エントロピー定理の証明の副産物として得られたものです. この 場合, エントロピーとは群作用の大きさを計る量で, 最小エントロピー 定理は「群作用がある意味で最小になるとき, その群作用はココンパクト格子の 作用と一致する」ということを主張しています. これも広い意味での剛性定理だ と言っていいでしょう. ここでは関連したいくつかの話題の紹介をしたいと思っ ています.

Last Modified : Mar 12, 1913 : 22:36