2015年度 筆記試験問題
      
整数の和差積が整数であることは小学校の算数,中学校の数学ではお馴染みのことです。さらに,高校数学では多項式を扱いますが,「f(x)が整数係数の多項式,nが整数なら,f(n)は整数」ということは,整数の和差積は整数であることの自然な帰結です。それでは,「f(x)が有理数係数の多項式とする。任意の整数nに対してf(n)が整数なら,f(x)の係数は整数か」という問題を考えてみましょう。この問題はx(x−1)/2やx(x−1)(x−2)/6が反例になって,あっさり否定されます。それでは,「任意の整数nに対してf(n)が整数であるような有理数係数の多項式f(x)はどのような形をしているか」,この筆記試験ではそんな問題を取り扱っています。
解決に必要な道具立ては組み合わせの数の公式と剰余定理の導き方,すべて高校数学でまかなえます。しかし,解析学で重要なニュートン補間につながる問題です。さらに,不思議なことに,整数を代入すると常に整数である多項式が,図形をはるかに一般化した多様体の研究で重要な役割を果たします。例えば,代数幾何学ではヒルベルト多項式という文脈で現れます。さらには,多項式の概念を一般化する必要がありますが,リーマン・ロッホの定理という文脈で現れます。高校数学で扱える対象が高等数学で重要な役割を果たす,この筆記試験のもう一つの背景です。
      
2014年度 小論文問題
      
長い歴史をもつ数学の発展のなかで,ギリシャ時代の幾何学は確かに高度に発展しましたが,その後しばらく停滞しました。17世紀に座標の概念が導入され,微積分学が発見されると,堰を切ったように爆発的な進歩を開始しました。微分の定義にいたる前夜,それに迫ろうとする数学者たちの思考は,今振り返ってみれば,殆ど完全に微分の概念を捉えてたことが分ります。これらのことは,高校生にも理解できる内容なので,それを楽しんでもらうのが一つの狙いです。これに加えて,ギリシャ時代から20世紀後半までの数学の発展の中から関連する話題を取り上げ,数学の考え方の大きな流れに触れてもらいたいと考えたので,やや長い読み物となっています。
      
2013年度 小論文問題
      
素数を人類が認識したのは四大文明の時代に遡ると想像されています。その素数が無限に存在することの,最初に記録に残されている証明は,紀元前300年頃にユークリッドが著した「原論」にあります。それから2000年後,オイラーは全く異なった発想で素数が無限に存在することを示しました。
この小論文は,ユークリッドの証明を今風に書き換えた説明から出発して,中高数学の範囲でも考えられる休憩所を所々に設け,オイラーの証明に至る散歩道に仕上げたものです。オイラーの証明を厳密に理解するには大学で学ぶ解析学が必要ですが,高校数学と断絶しているわけではありません。この散歩道の先をどう歩むかは人それぞれです。
      
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